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雪洞

2007年2月9夜~11日
 山の会の新人を対象にした雪山山行として、この3連休を使って北アルプスに行ってきました。目標は西穂高の独標。予報では、この週末の天気は悪いとのことですが、とりあえず現地まで行こうということになりました。
 メンバーは新人3人を含む計5人で、金曜日の夜に車1台で出発。行きは、関越道・上信越道経由で松本ICを降り、R158で安房トンネルを抜け岐阜県へ。深夜3時半頃に道の駅「奥飛騨温泉郷上宝」に到着。ここは夜間でも休憩コーナーのようなところが開いていたので、その中で仮眠をとることができました。
 朝7時に起きて、新穂高ロープウェイへ移動。空は曇っていて山の上は天気が悪そうです。ロープウェイの乗り場にはすでに多くの観光客が並んでいました。中高年の団体客がほとんどで、大きな荷物を背負った我々は奇異の眼で見られます。料金は荷物代込みで片道1,800円。けっこう高い。途中で乗り換え、一気に標高2,156mへ上がります。
 外はチラチラと雪が降っています。しっかり踏まれた雪道を1時間半ほど歩いて午前11時半頃に西穂山荘に着きました。さて、メンバー5人のうち、4人はテント泊、残る1人は小屋泊ということにしており、4~5人用のテントを一張り持ってきていました。テントは分担して、本体を私が、ポールを別の1人が持つことになっていました。
【雪洞づくり】
 雪が充分にあれば雪洞(せつどう)を掘って泊まろうということにもなっていて、小屋の人に聞くと、掘ってもよいとのことです。それでも荷物置場用にテントを張ろうということになりました。ところが、ポールを分担したメンバーが自宅にポールを忘れてしまったことが判明。雪洞掘りを楽しみにしていた私を含め、雪洞造りの俄然やる気が出てきました。雪洞を造らなければ今夜寝る場所がないわけですから。高いお金を払って小屋に泊まるなんて考えは毛頭無いですし。
 で、小屋に近い斜面に造る場所を決め、周りを整地してから、入口となる横穴をスコップで掘り始めました。居住部分の天井の雪の厚さは最低2m必要とのことなので、その厚さや内部の高さを稼ぐために、真横ではなく斜め下に向けて掘っていきました。この横穴はあまり大きく造るわけにいきません。雪が吹き込んでくるしそもそもそれだけ掘るのが大変になるので屈んで通るくらいの大きさに留めます。これがなかなか大変な作業で交P2100013替しながら掘り進めます。ほかの人は掘り出された雪を入口の脇へ運びます。
 ある程度深くなったところで、居住部分を造るために中を少しずつ広げて掘りっていきます。中に進むにつれ雪が締まってきてスコップだけでは崩すのが大変になってきます。そこでスノーソーという雪を切るノコギリの出番です。スノーソーで縦横に切れ目を入れると、ブロック状の 雪塊として掘り出しやすくなります。広がるにつれ、それまで一人で掘るのがやっとだったのが、二人で作業できるスペースができてきます。天井も意識して低くならないように削っていきます。やがて正面側に木の枝が出てくるようになりました。どうやら山の斜面に到達してしまったようです。居住スペースの奥行きは1.5mほどということになります。そこで両側に掘り進めて、4人が横になれるスペースを造っていきます。座った姿勢でスコップを扱うのは相当腕が疲れますが、楽しさが先行して交替したくない気持ちもあります。途中から小屋泊まりのメンバーも加わり、3人が中に入って作業をしてしばらく掘り進めたところで広げる作業は終えることにしました。幅は2.5mほど。
 次に床と天井の仕上げです。床を平らに均すのは快適に寝るためですから誰でも気づくことですが、天井も凹凸を削って中央を高く周囲を低くするようにドーム状にする必要があります。これは内部で火を使ったりした熱で天井の雪が融けるとその水滴が凸部からポタポタと垂れてくるためです。丸くすることでその流れを壁のほうに向けることができるのです。この作業に用いたのがコッヘル(鍋のこと)のフタです。これで天井から壁に向かってガーッと削っていくのです。削られた雪が落ちてきますから、フードを被っていないと首筋に雪が入って冷たい思いをします。さらに、壁の一部を四角く刳り貫いて棚を作りました。
2時間40分ほどで雪洞が完成しました。床に銀マットを敷き、荷物を運び込みました。小屋泊まりのメンバーも加わって、今度は夕餉の支度です。
 それにしても、聞いていたとおり雪洞の中はテントよりも暖かいです。外が吹雪いていても、吹き込みを防げば雪洞内は0度を下回らないそうです。テントだと布地の外は氷点下の世界なCimg3138のでやっぱり寒いです。下から運んできたビールや小屋で買ったワインを飲みながら楽しい夕食となりました。それに、壁に作った棚のロウソクのやわらかい灯がなんとも 良いものです。初めての雪洞体験はとっても良いものとなりました。小屋泊まりの人が小屋に戻り、残った4人で寝る仕度をしました。持ってきた衣類を全て着込み寝たのですが、あまりの暑さに途中で起きて脱ぎました。テント泊だと首筋周りをしっかり閉めておかないと冷気で非常に寒い思いをしますが、雪洞の中にいるとそのような寒い思いをしなくて済みます。
【雪山訓練】
 翌朝は予想通り前日よりも天気が悪くなっていました。雪も風も強くなっていまCimg3155す。朝食を済ませ装備を身に付けました。独標を目指すにしても決して無理はせず、これ以上は無理だと判断したらすぐに引き返すという前提で出発しました。ほかにも独標方面に向かう登山者がいます。
 小屋から少し歩き稜線に出ると、風がさらに強くなり、 風の当たる顔左半分が痛いくらいです。あとで鏡を覗くと頬の一部が黒くなっていて、メンバーの1人にそれは凍傷だと言われました。海外登山経験が豊富な人が言う言葉に、今後気をつけなければと反省しました。
 歩きCimg3162始めて20分くらい経ったところで引き返そうということになりました。結局、独標に関しては敗退ということになります。しかし、安全を考えれば正しい判断です。また、2泊3日の予定を早めて本日中に下山することも決まりました。それでも、時間はまだ9時。下山するには早いので、小屋の周辺でいろいろな練習をすることになりました。
[ワカン]
 まずはワカンでの歩行練習ということで、しばらくワカンで歩き回りました。斜度がきつくなるとワカンを履いていてもキックステップでないと滑りそうになります。
[スカッフ&コール]
 それから、スカッフ&コールというのもやりました。意識がある場合、雪に埋まっても雪の上を歩き回る足音や声はよく聞こえるそうです。そこで、捜索者は横一列に並んで、雪面を手でかくように捜索し(スカッフ)、雪面に両手でメガホンを作り呼びかけます(コール)。これを繰り返しながら四つん這いになって少しずつ進み捜索するわけです。
[プローブ]
 つぎに、雪の斜面を一部くり貫いてそこにザックや身体を入れて、上の雪面からプローブ(ゾンデ棒)で突いてその感触を体験するということをやりました。雪崩で埋まった人を捜索する際に、まずはビーコンの発する電波を頼りに位置を絞り、プローブで特定し、スコップで掘り出すわけですが、そのプローブの練習です。
[埋没体験]
 さらに、埋没体験もしました。雪に浅く穴を掘り、そこに横たわり、上から雪をかけて埋めてもらうというもので、わずか数10㎝とはいえ、雪の重さは馬鹿にならず身体が動かせません。まず底に銀マットを敷き、顔の周りに両手で空気のスペースを確保した上でうつ伏せになり、さらにツエルトをかけてもらいその上に雪を乗せてもらいます。埋まっていたのは5~6分ほどですが、だんだんと息が苦しくなってくるのが分かります。それに外の声はたしかに聞こえますが、雪面に近づけておかないと聞こえなさそうです。中からの声も同様で、雪から離れていては外の人は聞こえません。この練習は危険な面もあるので経験者がいない場合などはやらない方が良いそうです。
 小屋で昼食を兼ねて休憩した後、一晩限りの雪洞を壊すことになりました。そのままにしておくのは危険とのことだそうですが、居住部分を全部崩すのは上の厚さ数mの雪を崩さなければならないのでさすがに諦め、入口付近のみ塞いでおきました。
[弱層テスト]
 それで訓練は終わりかと思いきや、今度はボラードという雪の円柱を切り出し、弱層テストをしました。円柱を両手で抱えて手前に引くことにより、雪の中に弱い層があるとそこでズレるのです。
[ビレイ支点]
 その円柱やスノーバー、ピッケル、スコップ等を支点としたビレイがどれだけ強いかということを試すためにいろいろやりました。
[スタンディングアックスビレイ]
 さらに、スタンディングアックスビレイもやりました。個人的には先月の八ヶ岳・阿弥陀岳北稜に行った際にやったことがあります。ただ、谷側の足でピッケルを踏むよりも、山側の足でピッケルを谷側の足でピッケルから伸ばしたヌンチャクを踏んだほうが支持力があることが体験できました。これは修正点として勉強になりました。
 そろそろ下山しようということになり、荷物をまとめロープウェイの駅に向かいました。
 帰りには、平湯温泉の「平湯の森」で疲れを癒し、お正月の槍ヶ岳山行の際にも寄ったレストラン「ポム」で空腹を満たしました。私は前回と同じ260gのハンバーグ定食。
  独標に行けなかったのは残念ですが、雪洞をはじめいろいろと体験できたのは大きな収穫でした。

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