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明星山 P6 南壁「フリースピリッツ」・「左岩稜」

 秋たけなわ、新潟県は糸魚川にある明星山を登ってきた。平日の13()14()2日間という日程だったので、両日とも岩場は我々だけの貸し切り状態だった。

同行者は先月一緒に足尾のウメコバ沢で登ったHN田さんだ。HN田さんとはフリークライミングのゲレンデや沢登りには何度も行ったが、いわゆる本チャンのマルチピッチは前述の足尾が初めてだった。

その足尾では67ピッチのルートを一日に2本登れたこともあるし、安全確保を含めたお互いの登り方を確認できたので、今回の計画を思いついたワケだ。

明星は本来“みょうじょう”と読むのだが、クライマーの間ではなぜか“みょうじ”と呼ぶことが多い。取付までのアプローチが比較的容易である一方、石灰岩の岩壁で岩が脆いとも聞いていたこともあり、なかなか行く機会をつくらないでいたのだが、結果的には今回行ってみてとても良かった。

 所属山岳会に出した山行計画書では15()までの日程だったのだが、金曜日から土曜日にかけて雨が降るという天気予報が出発前から分かっていたので、実際は初めから2日間の行動で臨むことにした。

天気が崩れないことが分かっている初日の木曜日は、人気ルートとして知られているらしい、ルートが長く時間のかかりそうな「フリースピリッツ」を、雨がいつ降り出すか分からない2日目の金曜日は、これまた明星の入門ルートとして知られているらしい、ルートが短めの「左岩稜」を登るという計画だ。

 前夜12()、先の3連休の小川山での疲れがいまだ残る身体を押して、関越道のICに近い駅で19時半にHN田さんと待ち合わせ。ハッチバックが故障して開かなくなった愛車ルーテシアにドア側から荷物を積み込む。

 関越道~上信越道をひた走り、長野ICから通称オリンピック道路という県道を経て白馬へ。さらに国道148号線を北上し新潟県に入り、目的地となるヒスイ峡のある小滝川沿いに入る。明星山P6南壁を臨む駐車場に日付が替わる頃に到着。よく晴れた満月の夜のため、P6南壁のシルエットがどーんとぶっ立っているのが眺められる。この壁を明日登るのだ。

 車の脇にテントを張って4時間ほど寝ることにする。

13() 明星山 P6 南壁「フリースピリッツ」】

 荷物をまとめきれていない私は一足早く、まだ暗い4時半に起床。あいかわらず南壁のシルエットが浮かんでいる。取付にアプローチシューズなどを置いて行くつもりで、荷物をザックに積める。HN田さんも起きてきて、テントを撤収。Imgp4515

 ヘルメットをかぶって545分頃に出発。売店の左脇の小広場から小滝川の河原に下りる踏み跡があるので、そこを下りて行く。ほどなくして河原に出る。靴を脱いで裸足になり、秋の川に膝まで濡らしながら徒渉する。足尾のウメコバ沢でも小川山の妹岩に行くにもちょくちょく裸足で渡るので、少し慣れてきた。Imgp4518

 フリースピリッツの取付はもっと下流側なので、南壁の下をなぞるように河原を少し歩き、斜面の踏み跡を少し登るとそこがフリースピリッツの取付で、ボルトが目印となる。カムなどのギア類を身につけ、ダブルロープを結び、クライミングシューズを履く。

Imgp4519_1p

 デポするザックをそばに置き、まず1P目は私がリードすることにする。3P目や5P目がⅥ‐(5.8)とあるので(グレード表記は「改訂日本の岩場上」(白山書房)による)、そこを含め奇数ピッチを私が登るためだ。ピッチごとの詳細をなるべく書くことにするが、細かいところは覚えていない。

[フリースピリッツ]

1P()リード私:6:52に登攀開始。草付の岩場をガタガタと左に登って行く。脆かったり堆積した石が多くイヤな感じだが、もちろん難しくはない。Imgp45231p

2P()リードHN田:出だしからちょっと傾斜があるが、カムをきめながらHN田さんが確実に越え、さらに左に登って行く。この2ピッチで取付からずっと左に登ったことになる。

3P(Ⅵ‐,5.8)リード私:正直あまり印象に残っていないが、ルート図にあるとおり、スラブ~凹角と登ったと思う。

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4P()リードHN田:ルート図にはスラブを下りとあるが、それがどこなのかよく分からない。

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5P(Ⅵ‐,5.8)リード私:左のほうにうめぼし岩というのがあるそうだが、それがどれなのか分からない。とりあえず左にトラバースするのが、途中足元が切れているところもある。しかし手のホールドはしっかりあるので、確実に左にトラバる。そこから上に上がるようだが、凹角っぽいのがいくつかあるように見える。登れそうなところを上がったところに残置もあるので、そこでピッチを切る。しかしルート図にあるような右下にトラバースはしていないので、やっぱりよく分からない。Imgp4532_5p

6-7P(Ⅴ∔,+)リードHN田:ルート図の67P目をまとめて登ったので、はかどった。しかし50mロープを目いっぱい伸ばして登ったとしても、ルート図では計70mとなるので、どうもルート図が当てにならなさそう。Imgp4534_67

8-9P(Ⅴ∔,)リード私:やはり私が67P目をまとめて登った。後半は中央バンドのガレたところを横断して、右上する凹角の下端までロープをいっぱい伸ばしてピッチを切った。HN田さんがフォローで登って来たところで、お昼前頃。登攀開始から5時間が経過している。

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10P()リードHN田:中盤は下部に比べ浮石が少なく安定している印象。カムをきめながら右上して行く。ギザギザに尖った石灰岩が手に痛い。上部にヘの字ハングというかぶったところが見える。

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11P()リード私:ヘの字ハングを過ぎた右側を回り込むように登る。岩がギザギザで痛い。鷲ノ巣ハングというさらに目立つハングを右上に見ながら左に続くバンドに出たところでピッチを切る。

12P()リードHN田:ルート図にはパノラマトラバースとある。高度感があるが、バンドはしっかり続いている。

Imgp4544

13P(Ⅵ‐,5.8)リード私:ルート図にあるように凹状スラブなのだろうが、登って行き、やがてブッシュに入りピッチを切る。

14P(Ⅲ~Ⅳ)リードHN田:ブッシュの中の岩を左上左上と登って行くと、左岩稜らしきあたりに出る。ロープはあっても良いが、なくても良さそう。ルート図では60mとあり、ほんの目の前を越えると稜線を回れるようだ。Imgp4546_14p

15P目リード私:本当にロープは不要だし、10mほど歩けば岩を越えて反対側に下降して行くところに出た。ここで終了とする。

HN田さんが着いた時間を持って登攀終了として、取付から8時間20分ほど。ルート図記載の時間よりはずっとかかってしまったが、ルートファインディングなどで時間を取られたことを考えれば、まあ順当な登攀だったかと。岩が脆いところがたくさんあったが、登攀自体は危ない場面もなく登れたと言って良さそうだ。

登攀中、時々観光客が来て、対岸の道路からこちらを見ているのが分かった。ただ、岩壁を眺めるだけより、その壁の中に人がいるのを見るほうが壁のスケール感が分かって良かったかも。平日だからか、数えるほどしか人は来なかったと思うが。

[下降]

ここでロープを解いて、少し休憩。下降時のアプローチシューズを持ってきていないので、クライミングシューズのまま下る。私のシューズはゆるいので歩けるものの、HN田さんのはキツめらしく歩くには向かないようだ。

下降路は左岩稜の終了点となる松の大木を目指してまずは下って行くはずだが、下に向かって見て、ずっと右下遠方にある木がそれだろうか。踏み跡といえば踏み跡だが、判然としないところを灌木を掴みながら慎重に下りていく。Imgp4549

ヤブ漕ぎ同然の歩きで山肌を下りながら横へ横へ行くと、その大木に出た。テープが巻かれていて、正しいようだ。その先はピンク色テープが多くあって目印となり、それをたどってさらに西面に回り込むように進んで行く。下りつつもけっこう西側に進むのだ。

やがて枯れ沢に出るのでそこを下ると、下方に人工物が見える。開けたところに発電所の導水管というのだろうか、黒く太いパイプがある場所に出る。初めて歩くので、踏み跡探しに時間を取られ下降にけっこう時間を要した。

取付に残したザックを回収にいかないといけないのだが、ここからがさらに大変だった。さらに川に向かって下りていく導水管の脇を下り河原に出るのだが、取付まではけっこう下流まで歩かなければならない。Imgp4550

しかし河原伝いに歩くことはできず、裸足になって徒渉しなければならない。水の中を幾度も歩くので、足の裏が痛いのだが裸足のまま河原の石の上を歩いて行く。最後の最後にこんなことをすることになるとは。しかし、裸足で歩くのも少し慣れたかも。取付まで続く河原に出たところでシューズ、といってもクライミングシューズだけれど、それを履いて行く。取付への斜面を上がると、荷物が見当たらない。すわ、盗まれたかと驚く。我々の登攀中、下の河原を歩いている人がいるとHN田さんが言っていたのだ。と、人を疑ってしまったが、もう少し登ったところに無事ザックを発見。似たような場所と勘違いしてしまった。

再び裸足で徒渉して、対岸に戻ったところでアプローチシューズに履き替える。ちゃんとした靴を履くと安心感が違う。朝降りて来たところを登り、無事駐車場に到着。もう夕方の5時半近くで暗くなりかけている。お疲れさまでした。

 夕食を食べるため、糸魚川の街まで行くことにした。行き先は「蒸気茶屋」という定食屋。タラ汁が目的だ。この店は白馬にスキーに来た時の教えてもらって知ったのだが、以来、7年前に日本海側を自転車でサイクリングした際に寄ったり、車やバイクでドライブして糸魚川まで来た時にも寄っている。閉店の時もあったが。他にも良いお店はあるだろうが、同じお店に通うというのも懐かしくて良いものだ。何年ぶりだろうか。

Imgp4552 Imgp4553

 そういうわけで、国道沿いのこの店に入り、二人ともタラ汁定食1,250円を注文。さらにフリースピリッツ完登祝いにスズキの刺身800円も追加。疲れた身体には、こういう食事はさらに美味しく感じるものだ。

 食品スーパーで翌日の食料などを買い、明星の駐車場に戻って、テントを張る。明日も晴れますように。

14() 明星山 P6 南壁「左岩稜」】

 515分起床。

Imgp4554

 取付までアプローチシューズを取りに戻るのは徒渉もあって手間なので、背負って登ることにした。なので、前日使ったナップザックでは入りきらないので、ちょっと大きいが30Lの軽量ザックを使うことにした。お湯を沸かしてコーヒーを飲んだり、スーパーで買ったお惣菜を食べる。ずいぶん明るくなった6時過ぎに出発。踏み跡を下り、少し上流側から徒渉して、左岩稜ルートがあるらしきガレ場に出る。

Imgp4558

 草付の斜面下から登攀を開始しても良いのだが、そこを登って前傾バルジとあるところから始めると、1P目は短く済み、さらに2P目も続けて登れそうだ。となると、ルート図の3P(実際の2P)は人工登攀のセクションとなる。人工ピッチのリードに自信がないというHN田さんに代わって私がリードするので、最初はHN田さんに行ってもらうことにした。草付きを登り、岩場に出た狭いところでロープを結ぶ。

[左岩稜]

1-2(途中)P(Ⅴ~Ⅳ)リードHN田: 7:25頃に登攀開始。頭上の岩を登り、テラス状に出たところからさらに右寄りよりを登る。ハルシオンや左フェースルートを分かれるポイントが2P目の終了点のはずだが、ロープの流れが悪くなり、その一段手前でピッチを切ることにしたとのこと。Imgp4564 Imgp4565

2(途中)-3(途中)P(Ⅳ~Ⅲ,A1)リード私:人工のあるピッチ。ここのためにアブミを持ってきたのだ。FreeWillという5.12aでフリー化されているらしいが当然やらない。登れるかもしれないが、それだけで一日かかってしまいそうだ。

左上して、悪い乗っ越しをA1で越え、さらに左上しペツルのボルトが連打された人工直上セクションに着く。ボルト間隔がずいぶんと短く、アブミの上段に乗りこんで次のボルトにかけるという必要がなさそうだ。

見上げた範囲で78ピンくらいだったろうか、ヌンチャクをかけてロープをかけ、さらにヌンチャクにアブミをかけて乗り込む。身体を上げたらフィフィで一休み。さらにその上のボルトにヌンチャクをかけるというのを繰り返す。垂壁部分を越えてから気づいたのだが、ボルト間隔が短いし、支点がしっかりしているのだから、ボルトの全部にヌンチャクをかける必要などなかったのだ。23ピンに一つでも良かったのだ。

全部のボルトにヌンチャクをかけてしまったものだから、垂壁部分を越えた先のスラブ状でもしばらく人工セクションがあるのを見つけても、手持ちのヌンチャクが尽きてしまい、ここでピッチを切ることにした。支点もしっかりあるし、HN田さんにも人工のリードを体験してもらえるし、まあ良しとしよう。Imgp4570 Imgp4573

3(途中)-4P(A1~Ⅴ∔)リードHN田:スラブ状のところを人工で登り、続く凹状スラブからハング下を登るとあるが、ハングの形状が顕著でないせいかよく分からない。しかし、登っているラインは間違っておらず、着いたところは失神テラスというところのはずだ。

Imgp4578 Imgp4580

5P(+)リード私:凹角と言われれば凹角。易しい。着いたところで、右手に松の木テラスが見える。ハルシオンで通るところのはずだ。Imgp4581_5p

6P()リードHN田:フリースピリッツのパノラマトラバースと似たようなところを少し左に進み、そこから直上して、ロープいっぱい登る。Imgp4583_6p

7P()リード私:ルート図では、大岩から赤い凹角を登り、前日通った松の大木まで草付き混じりのフェース100mとあるが、ロープをいっぱい使って登り、710P4ピッチを要した。ここ7P目では私はランナーはいっさい取らずさっさと登る。

8P()リードHN田:7P目と似たようなところ。

9P()リード私:少し登ると、大岩が現れる。目立つのでこれが大岩かと分かる。その大岩の左側の踏み跡を登ると、これまた顕著な凹角が眼前に現れる凹角の上部がY字状になっていて、その部分の岩が赤っぽい。だから赤い凹角というのか。

10P()リードHN田:しばらく続いた易しいところよりはクライミングっぽくなる。凹角から右手を登り、灌木帯に入り、右にトラバースすると松の木に出る。ここで終了とする。

Imgp4586_10p

時刻は12時半。要した時間は5時間。まあ今回も順当だ。しかし長く続いたⅢ級で、重いロープを引いて疲れた。暑くもなく寒くもなく、ここで少し昼寝していたいくらいだ。ロープを解き、水分を取ったり食べたりしてから、背負ってきたアプローチシューズに履き替える。

前日歩いた踏み跡とはところどころ違ったものの、テープをたどって下山。前日よりもずっと早く河原に着く。導水管が上空を渡っている少し下流側で飛び石伝いにジャンプして川を渡ることができた。裸足で徒渉する手間が省けた。ふう。ヤブ漕ぎして作業道から車道に出て、駐車場に無事帰着。Imgp4595 Imgp4597

午前中は晴れていたのに、雲がずいぶんと増えてきている。こうして左岩稜も無事登ることができた。

車に戻って荷物を積み込み、フリースピリッツが見えるあたりに車を移動させたところで、雨が降り出した。絶妙のタイミングで下山できたわけだ。良かった。

せっかくこんな遠くまで来たのだがら日本海を見ながら帰ろうということになり、再び糸魚川へ。国道8号線を上越市方面に走らせる。雨が降ってグレー色の空と海の日本海は演歌が似合いそうな風景だ。Imgp4602

建ち並ぶ家々も東京では見られない雰囲気だ。途中、マリンドリーム能生という道の駅に立ち寄ると、ベニズワイガニの直売所が並んでいたので安めのカニを買う。休憩所の中で、借りたハサミなどの道具でカニをつつく。う~む、うまい。普段カニなど食べる機会はないし、遠くまで来たのだからこういうのは食べておきたい。いつものクライミングだとそこらの定食屋に寄ることがあるくらいだが、今回のように足を延ばした時くらいは美味しいものを食べておきたいものだ。Imgp4604

直江津を過ぎて、妙高市に向かうあたりでHN田さんに運転を代わってもらい、長野市~佐久市を経て、碓井軽井沢ICで上信越道に乗り、横川SAまで運転してもらった。私の車は左ハンドルのマニュアル車なので運転を代わってくれる人がなかなかいないので、大変助かる。横川から東京までは追い越し車線をぐいぐい走っていき、日付が15日に替わる頃にHN田さんを家まで送ることができた。

 こうして今回の明星山でのマルチピッチクライミングを無事終えることができた。3日間あればクイーンズウェイを登りたいとも考えていたが、今回は今回で満足だ。有名人気ルートを順番待ちもなく貸し切り状態で登れたし、危ない場面もなく思った以上に快適に登れたと思う。HN田さん、本当にお疲れさまでした。

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コメント

2本完登、おめでとうございます!!scissors
明星に行ったことがない私は、羨ましいです。
HN田さんはたくましいですね。

さちさん、ありがとうございますhappy01

普段のクライミングも良いですが、たまにこうしてマルチピッチを登るのは楽しいですね。

HN田さんはホントたくましいです。

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