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北アルプス縦走(北鎌尾根~前穂北尾根)

8/8()夜~12()

■行き先・ルートの検討

 ひさしぶりに北アルプスを歩いてきた。以前は縦走をしていたものだが、クライミングを始めてからは歩く登山からは縁遠くなっていた。

 今回、行き先を考えるにあたり、5月に入会した山岳会の人達の多くは早々に夏の計画を固めていたので、それに加わらなかった私としては、こういう時でもなければ一人で行きそうもないところを考えてみた。

 そこで、夏山と言えば北アルプスというのは良いとして、ただ一般登山道を歩くだけでは物足りないし、せっかくクライミングをやっているのだから、登はん要素のあるバリエーションルートに行くことにした。

【北鎌尾根】

 すぐに思いついたのは北鎌尾根。言わずと知れた槍ヶ岳の北側に突き上げるクラシックルートだ。古くは加藤文太郎や松濤明の遭難が有名なので、無雪期とはいえ一度は訪れてみたいと思っていた。いちおう、「単独行」も「風雪のビヴァーク」も読んだことがあるし。

 尾根の末端から取り付くというのは相当大変そうなので、行く人の多くが選んでいるはずの北鎌沢を詰めることにした。

アプローチとしては主に3つあるようだ。①高瀬ダム~湯俣~千天出合~、②中房温泉~合戦尾根~大天井岳~貧乏沢~、③上高地~水俣乗越~。

②は、合戦尾根を登って沢をまた下りるというのがどうも面倒くさい。③は、上高地を起終点にできるが、文字どおり縦走するという感じがしない。

③は、水俣川の渡渉が心配されたが、高瀬ダムから南に向かってずっと歩いて北鎌尾根をこなし、後述する穂高方面への縦走とすれば、北から南へのきちんとした縦走という感じがする。ということで、高瀬ダムからアプローチする案に決めた。

【前穂北尾根】

 貧乏性の私としては、交通費をかけて北アルプスまで行くのに、北鎌尾根ひとつだけではもったいないので、もう一つどこかのルートを登ろうと考えた。そこで、これまた行ったことのない前穂高岳の北尾根にした。ガイドブックを紐解くと、涸沢から五・六のコルにあがり、北尾根の上半部だけを登ることができるようだ。核心が3峰のようなので、おいしいとこ取りだ。

 日数を足して北穂東稜も登ってしまおうかとも考えたが、そこまで欲張るのはやめた。

 そこで、計画した行程は以下のとおり。

【計画】

8/8():仕事を終え、夜に車で信濃大町駅へ。

8/9():タクシーで高瀬ダムへ、湯俣~千天出合~北鎌沢出合泊

8/10():~北鎌沢右俣~北鎌のコル~北鎌尾根~槍ヶ岳~肩泊

8/11():~北穂~涸沢泊

8/12():~五・六のコル~前穂北尾根~前穂~岳沢~上高地、帰途へ

 結論を先に書くと、行程はそのままに実際の日程を以下のとおり縮めることができた。

【実施】

8/8():仕事を終え、夜に車で信濃大町駅へ。

8/9():タクシーで高瀬ダムへ、湯俣~千天出合~北鎌沢出合~北鎌のコル泊

8/10():~北鎌尾根~槍ヶ岳~北穂~涸沢泊

8/11():~五・六のコル~前穂北尾根~前穂~岳沢~上高地、帰途へ

【装備】

 装備についてちょっと触れておく。ザックは40L。日数分の食料やガス・鍋類。着替えは必要最小限。今回のために、モンベルの通気性の良い襟付き長袖シャツとハット型帽子を購入。これで少しはヤマケイJOYっぽい格好にはなるかな。

荷物が重くなるけれど沢の遡行に備えて沢靴、それから前穂用にクライミングシューズも。120㎝スリング2本に環ビナ2枚、ヘルメット。それから補助ロープとして720m。懸垂下降にしか使わない。

山岳会のS木さんに貸してもらったパイネのソロテント。シュラフカバーのみとし、代わりに薄いダウンジャケットを携行。無線機も。

88()夜 信濃大町駅へ

 ウェザーニューズの天気予報を見ると、松本や高山方面は、土曜日は曇りっぽくて、日曜日になると雨マークがある。山行後半の天気が心配だ。

仕事をちょっと早引けして帰宅。荷物はまとめ終わっているので、シャワーを浴びて18時半に車で出発。関越道~上信越道と走り、22時を過ぎてから麻績ICを下り、23時前に信濃大町駅に着く。あらかじめ電話でタクシー利用を申し込んでおいた、駅前にあるアルプス第一交通㈱の営業所の声をかけると、残念ながら翌朝乗るタクシーの同乗者はいない見込み。営業所裏手にある駐車場に車を停めて車中泊。

89() 高瀬ダムから北鎌のコルへ

【高瀬ダムへ】

 4時過ぎに起きて、着替えて車を出る。営業所を覗くとすでにタクシーが待機していて、5時前に出発。やはり同乗者はいなかった。5時半に開くという七倉のゲート脇に建物があり、そこで登山届を書いて提出。そこにいる女性の管理人がちょっと個性的な人で、登山行程などを聞かれたあとに「あなたにとって山ってナニ?」と質問された。何と答えたものかちょっと迷ったが、山に遊びに来たんです~とかなんとか答えておいた。タクシーの運転手さんの話しでは、「あなたはなぜ山に登るのか?」とか聞かれた登山者もいたらしい。

 七倉から高瀬ダムまでは、トンネルを抜けダムの堤体を登っていくと着く。車を降りると、思ったよりも風が冷たい。Tシャツ一枚では寒いので服を重ねる。

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【湯俣へ】

ほかのタクシーで来た登山者たちが真砂岳方面に向かっていくのを横目に、5:45に歩き出す。湖面左岸側にあるトンネルに入る。長いトンネルを歩いていると、何か作業のためか車が通り過ぎていく。延々と歩いていると、道路下の広場で何人かが作業をしている。荷物が積んであるので、山小屋にヘリで荷物を運ぶベース地なのかな。なおも歩いて6:40頃、車が通れる幅だった道が途切れて、この先は車は入れなくなる。

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途中、無名避難小屋と書かれた建物を覗く。昔、八ヶ岳の天狗尾根に行った際に停まった出合小屋にあったものと同じ形のストーブがあった。

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真砂岳方面から下山してきた登山者だろうか、数組とすれ違う。7:45、対岸に晴嵐荘が見えてきた。

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と、登山道のすぐ左上に湯俣山荘の廃屋が建っている。晴嵐荘に渡る吊り橋のたもとに道標があり、北鎌尾根を経て槍ヶ岳まで10㎞とある。長い道のりだ。

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高瀬川が右手に曲がっていく先に取水施設があり、そこを通り抜けると水俣川と湯俣川の出合となっていて、水俣川側に吊り橋がかかっている。昔、流されたという吊り橋がこれだとすると、架け直されたのか。それでも古びた感じだけれど。

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吊り橋を渡ったところの出合の突端にお社がある。ここで安全登山を祈願する。

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空は抜けるような青空だ。吊り橋のたもとから河原に下りる。

【水俣川~天上沢遡行】

今回、水俣川から天上沢を遡行するにあたり、登山靴を濡らすまいと山の斜面から無理に巻くよりも、濡れるのを承知で沢の中を行ったほうが帰って安全だし速いだろうと考え、沢靴を用意してきた。ここでその沢靴に履き替える。ズボンも沢用タイツに履き替え、ハットをヘルメットにかえる。

ほかに誰もいない沢を歩いていく。強い陽射しで辺りがきらきらと光って、いかにも夏山という感じできれいだ。

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千天出合まで渡渉を20回近くは繰り返しただろうか。沢がカーブするたびにその外側は河原が途切れ崖になっているので、その手前で対岸に渡らないといけない。水量は私の身長でひざ上くらい。女性だったら股下くらいになってしまうだろう。慎重に足を出さないとバランスを崩して流されそうになる。落ちていた木の枝を杖にして渡渉する。この杖、千天出合を過ぎて水量が減るまで大いに役立った。雪解け水のためか水が冷たい。

中東沢を分けても水量が減った印象はなかったが、9:45頃、千天出合に着くと、明らかに減ったのが分かる。

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一方、これまでほとんど平坦だったのが、天上沢からは沢らしくなってきた。小滝には巻き道があるのでそっちを行く。

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水量も減ってゆきどんどん歩いて行くと、河原が広く開けてきた。北鎌沢の出合が近いかもしれないと思い、右岸側を見ながら歩いて行く。1120頃、どうどうと水が流れる沢の出合に着き、そばにケルンもあることから、北鎌沢出合であることが分かる。ここでも誰にも会わず。上を見上げると、北鎌のコルらしきところへ続く沢筋が見える。ここで、沢靴やタイツを脱ぎ、湯俣までの靴とズボンに戻る。

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【北鎌沢】

 当初の予定では、ここ北鎌沢出合に泊まるはずだが、まだ昼前なので北鎌のコルまであがることにした。

 北鎌沢は右俣と左股があり、行った人の話しで、間違って左俣に入ってしまうことがあると聞いていた。眺めると、コルに突き上げる沢には雪がなく、明るい緑色で覆われた沢筋が続いているように見える。ここを詰めて行けば良いはずだ。と、思っていたら結論から書くと、愚かにも左股に入ってしまったのだ。

 右俣はかなり上のほうでも水が汲めるらしいので、出合では水を補給せずに出発。しばらく沢筋を左右に行ったり来たりしながらどんどんと登って行く。やがて見上げると正面に雪渓の突端があった。ここでルートを誤っていることに気づかなければならなかったのだ。

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 左俣は延々と大きな雪渓が続いている。それと気づかずに雪渓左岸側を登って行く。

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 時計の高度計が2,150mを示しているあたりに着いたとき、見上げる雪渓が左に大きくカーブしている。さらにその先で右にカーブしているようだ。谷を埋め尽くす設計は谷の斜面際では切れていて、その隙間に落ちたらヤバい。今頃になってやっと間違ったことに気づいて辺りを見渡す。左俣は左にカーブしていくが、涸れた沢が正面に分かれている。とりあえずここを詰め、なんとか右俣に出ようと考えた。これがまた大変だったのだ。地形図とにらめっこして現在地を推定し、左俣の現在地から上部には枝沢がいくつもあり崖マークもあるのが分かる。

 涸れた沢を少し詰め、左岸側を見ると、枝尾根の傾斜が緩んでいるところを見つけたので、そこを目指す。斜面に生えた草を掴みながらのトラバース。枝尾根を回り込んでも、すぐには右俣らしきところには出ない。延々とヤブ漕ぎを続ける。途中、踏み跡らしきものを見つけるが、こんなところを人が通るはずがない。二度、大きな糞を見つけた。このサイズからすると熊か。ということは獣道か。野生の動物もなるべく通り易いところを選んでいくはずだから、私のヤブ漕ぎのライン取りも悪くないらしい。そもそも右俣と左俣を間違ってしまって入るけれど。

 細くても木の枝は良い手がかりになるのだが、草はつかんでもブチブチと千切れてしまう。と、足を滑らせる。滑り落ちながら目の前にある草を掴むがやはり千切れる。とっさに掴んだ細い枝で止まった。見上げると2mほど斜面を滑り落ちていたようだ。危ない、危ない。こんなところでケガをして身動きが取れなくなったら助けを求められない。水を汲みそびれてしまったので、あまり残っていない。水が少ないというのはやっぱり不安だ。

 このヤブ漕ぎで、買ったばかりの長袖シャツはすっかり使いこんだ感じになってしまった。右俣方向へ、そしてなるべく上のほうに延々とヤブ漕ぎしていくと、大きな谷が出て来た。これが右俣か。と言っても、谷そのものの幅が広く、北鎌のコルらしきところは谷の上部奥のようだ。向かいにピークがあり、それがP7のようだ。

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 やがて崖に突き当たった。ここをクライムダウンするのは手がかりもなくちょっと厳しそうだ。大きな木があったので、懸垂下降することにした。スリング2本を股と両腕に架け、環ビナでつなげる。720mを木にかけて下に下ろすと、なんとか下に届いているようだ。環ビナに半マストでロープをかけ、懸垂下降して行く。背中の荷物が重いし、スリングでは身体に食い込むが、ちょっとの距離なら問題ない。崖を下り着き、ロープを回収。右俣の中を歩いて、まずはコルらしきところを目指す。そして15時前にようやく北鎌のコルに着いた。誰もいない。約2時間ヤブ漕ぎしたわけだ。とりあえず無事にコルに着くことができ安心。コルは狭いながらも平坦になっている。

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【北鎌のコル】

 北鎌沢をさっさと登ってしまうことができれば、今日のうちにさらに北鎌尾根を歩き通してしまえるかもと欲張った考えも、北鎌沢を登り始めた頃はちょっとあったが、今となってはそんなことは諦めて、まずは水の確保が先決だ。

 今回S木さんに貸してもらったソロテントを張ってから、右俣を下りて水を汲みに行く。某ガイドブックに、少し下れば水があるとあったので、ザックに水筒を入れて出発。今回用意した水筒は、ナルゲンボトル1L、プラティパス2L0.75L3つ。

 標高差にして50mほど下ると、石の隙間に小さな流れを見つけた。汲みづらそうだったので、なおも下って行くが再び涸れた沢はなかなか水が現れない。諦めて登り返し、先ほどの流れで汲むことにした。0.75Lのプラティパスを横に寝かせて、水の流れに口をあてがい、一度に200mlくらい入れてから、ほかのボトルに移すというのを繰り返す。時間はあるのだから慌てる必要はない。汲み終え、喉の渇きも癒してからコルに戻る。

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 とにかく疲れた。テントの中で横になって休む。

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 一時間ほどごろごろと横になっていたら、誰かがやってきた。テントから顔を出すと、若者が一人でやってきたようだ。聞くと、上高地から水俣乗越を経てやって来たという。水俣乗越からの下りはけっこう雪渓があったという。確かに、あちこちに雪渓があって、水俣乗越らしきところにも貧乏沢らしきところにも雪渓があるのが眺められた。

 若者はテントを張らずに地面にごろ寝するという。今夜は天気が良さそうだから大丈夫か。若者は食事を済ませて早々に寝るようだったので、私も食事をとる。アルファ米にフリーズドライのマーボーなす丼、あとはスープやコーヒーなど。

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 あと、ウイダーのリカバリーパワープロテインという粉末を持ってきたので、水で溶かして飲む。今回、筋肉痛になるくらい歩いているのに、翌朝にはなんとか回復していたのは、少なからずこのプロテインのおかげかも。この製品はプロテイン100%でなく、むしろ糖分が多いので、こういう一日中身体を動かしたあとのケアには良さそうだ。

 荷物を削ってシュラフを持ってきておらず、薄いダウンを着ているとはいえシュラフカバーだけでは寒かった。とくに夜が更けてくると気温が下がってきて、腰や腿まわりが冷えるとなかなか寝付けない。若者は4時くらいに発つといっていたので、私もそれくらいの出発を目指して起きることにした。途中、トイレにテントを出ると、空は良く晴れていて星がきれいだった。こうして長い第一日目が終わった。

810() 北鎌尾根から槍、北穂、涸沢へ

【北鎌尾根】

 まだ暗い2時半頃に起きる。若者も起き出しているようだ。残しておいたアルファ米をお茶漬けにして食べて片づけをしても3時過ぎでまだまだ夜明けには遠い。暗い中を岩稜歩きするのもイヤなので、テントの中で横になって時間をつぶす。若者が一足先に出発していった。今日中に上高地に下りるらしい。まだ暗かったがテントを撤収。ヘルメットにヘッ電を付けて4時に発つ。しばらく急登が続く。4時半をまわってようやく明るくなってきただろうか。やがて開けたところに着く。天狗の腰掛け2,749mか。ここら辺で若者を追い抜く。Imgp5818

岩稜の中にははっきりした道もあれば踏み跡程度のところもある。稜線を行ったり岩峰を巻いたりとルートファインディングに迷うところも多い。5:35頃、独標2,899mに着く。朝日に照らされた北鎌尾根の先に槍ヶ岳が聳えている。ここから再び標高を下げて進んで行く。稜線上を行くこともあるが、千丈沢側の斜面を行くところも多い。踏み跡が複数あるのだろうか。斜面側を行く時は、岩屑が堆積しているところを行くことも多く、稜線を行くよりも返って危ないのかもしれない。一般登山道ではないので、やはり浮き石が多く、手で叩いてみながら慎重に進んで行く。途中、大きめの石を落っことした時は、轟音を立てて谷底に転がって行った。後続の若者も無事に来ているだろうかと思い、振り向くと後方の稜線に一度だけ姿を確認できた。その後は見ていないので分からない。Imgp5824 Imgp5825

735頃、北鎌平らしきあたりに着く。槍ヶ岳が近い。小槍も見える。Imgp5826

途中、ザックが2つデポしてあった。誰かがどこかを登攀しているのかと思っていたら、後で槍に登頂した際に、小槍を登っている人達が見えた。彼らの荷物だったらしい。

槍ヶ岳山頂への最後の登り、やがて山頂にいる人の姿が見えてきた。最後は岩をさくさくと登って山頂着。やった。810分頃。高校生らしいグループを含め、10数人ほどが山頂にいた。登山者に、北鎌尾根から来たのかと聞かれたので、そうですと答える。

今日は金曜日。職場の始業時間は8時半だから、職場の面々が仕事を始める前に、私は北鎌尾根を登るという一仕事を終えたわけだ。コルから4時間10分。5時間くらいかかると見ていたので良いペースだ。素晴らしい眺めだ。穂高方面もよく見える。下には槍ヶ岳山荘が建っている。

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【槍~北穂~涸沢】

 槍ヶ岳には、高校生の時に初めて登り、縦走をしていた頃にも数回登っている。以前所属していた山岳会にいた2006-07年の年末年始には、横尾尾根を往復して登ったこともある。この時は天気に恵まれ、冬山の厳しさをあまり感じることなく快適に登ることができた。

 さて、槍の山頂にいるのもつかの間、さっさと下山にかかりたいところだけれど、梯子が順番待ちでしばらく待つ。山頂からの下りは、北鎌尾根側に比べるとはるかに安定しているので、他の登山者をどんどん抜きながらあっという間に槍ヶ岳山荘に到着。ここで一休み。小屋の自販機でCCレモン300円を買う。ああ、おいしい。

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休憩中脱いでいた靴を履き直し、9時頃に北穂に向かって歩き出す。ヘルメットも帽子にかぶり直して。まだまだ一日は長いので、この日のうちに涸沢まで行ってしまおう。一般登山道をヤマケイJOYな気分でどんどんと稜線を南下していく。大喰岳は山頂が登山道からちょっとはずれているので、気が付いたら通過していた。中岳を過ぎ、南岳を越えると、下に南岳小屋が見える。南岳小屋に着いたのは10:45頃。まだ午前中だ。木製の台の上で横になってしばし休憩。

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 ここから北穂までは、槍穂縦走路中の難所と言われるところを通る。ガスが少し山にかかってきた。まずは長谷川ピークに登る。

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 その先で、飛騨泣きというところがあり、ここではピンや鎖を遠慮なく使って越える。さすがに疲れてきた頃に、北穂高小屋が頭上に見えてきた。小屋に着いたのは13時半過ぎ。ここで再び大休憩。

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 さくさく歩いて、計画していた山行日程を縮めてきているので、背負ってきた食料も余ってしまう。お湯を沸かしてカップラーメンを消費する。ビスケットなども我慢せずにぱくぱく食べる。トイレに行く。100円。小屋から前穂北尾根も涸沢も見える。明日はあそこを登るのだ。

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 北穂山頂を経て、分岐から北穂南稜の登山道を涸沢に向かって下りていく。涸沢山荘といくつものテントがはるか下に見える。その向こうには前穂北尾根が連なっており、明日取り付く五・六のコルに至るアプローチをじっくりと眺める。大雪渓がテント場の正面に大きく広がっているのはもちろん、雪渓右岸側から五・六のコルに至る谷筋にも雪渓が伸びている。大雪渓の右岸に沿って登っていけそうに見えるが、五・六のコルへの谷筋の手前の小さな谷筋にちょっと食い込んだ雪渓は渡らないといけなさそうだ。五・六のコルへの谷筋に残る雪渓の左側の斜面にはうっすらとジグザグの踏み跡が見える。どうやらあそこを辿っていけば良いようだ。北穂南稜を下りながら、五・六のコルへのアプローチに目星をつけることができた。

Imgp5845

 ついでに、北穂東稜へのアプローチも見ておきたかったのだが、よく分からなかった。ゴジラの背と呼ばれる岩稜らしきギザギザはよく分かったけれど。

【涸沢】

 涸沢小屋を横目に、テント場に着いたのは16時過ぎ。昨今の山ガールブームで、北アルプスのメジャーなテント場はソロテントで埋め尽くされていると聞いていたけれど、この日は思ったほどテントの数はなかった。涸沢には、穂高から下山してきたときに一度通過したことがあるだけだったので、一度くらいは泊まっておこうと思っていた。

 テント場そのものは、石が堆積した中にあるので、決して快適とは言い難い。なるべく小石が平坦になっているところを探してテントを張った。マットが無かったら背中が痛くて寝られないだろう。

 テン場代500円を払って、涸沢ヒュッテでビールを買う。キリン一番搾り500ml缶で700円。ちなみに350ml缶は500円。テントに戻って、柿ピーをつまみながらビールを飲む。ああ、うまい。

近くの大きな岩で女性2人がボルダリングをやっている。クラッシュパッドまで用意している。わざわざここでボルダリングをするためだけに背負ってきたとは思えないから、小屋のスタッフなのかな。フラットソールを持ってきていたから自分もできないことはないのだが、ビールを飲んでふわふわと気が抜けてしまったし、そもそも両足が筋肉痛で今更動くのもイヤだった。

先ほど小屋で見たウェザーニューズの天気予報では、明日は曇り、明後日は雨マークがある。やはり頑張って日程を縮めたのは正解だった。明日、前穂を登って下山しよう。

アルファ米をお茶づけにして夕食。寝る前には前夜同様、プロテインを飲んでおく。なるべく寒い思いをしないために、ダウンジャケットを腰まわりに巻いて寝る。その分上半身が寒くなってしまい、夜中に起き出して、シュラフカバーの中でザックカバーを両肩と両腕を包むようにかぶせた。使えるものは何でも使わねば。

811() 前穂北尾根から上高地へ

【前穂北尾根】

 3時頃に起床。残ったアルファ米にフリーズドライの中華丼をかけた昼食。ほかにコーヒーなど。テントを撤収し、ヘルメットにヘッ電を付ける。クライミングシューズやスリング・カラビナはザックの上部に入れておく。真っ暗な中、大雪渓のほうに灯りが見える。先行パーティーがいるようだ。あとを追うように4時に出発。

雪渓を右に見ながら、そのすぐそばのガレ場をヘッ電の灯りを頼りに進んでいく。10分ほど進むと、五・六のコルへの谷筋の手前の谷筋にかかる雪渓を渡るところに着いた。前日のうちに見ておいて良かった。うっかりするとこの谷筋を詰めて行ってしまうところだ。

雪渓の上を2030mほどだったか慎重に歩いて越える。再びガレ場を歩いていくと、先行パーティーの灯りが見えない。五・六のコルへの谷筋に向かって、左に曲がっていったようだ。

少しずつ夜が明けてくる。先行パーティーは何を迷ったのか、谷筋の雪渓を対岸にトラバースしたかと思うと、再び戻ってきた。どうやら少なくともガイド登山ではないようだ。初めて来るところで、迷っているみたいだ。その間、私はガレ場のジグザグした踏み跡を忠実にたどって高度を稼ぐ。ヘッ電を消す。先行パーティーとはほとんど同時にコルに着く。5時。地形図では涸沢の標高は2,309m、五・六のコルは約2,730mだから標高差420mを1時間で登ったことになる。

見ると先行パーティーは男性3人。ザックからハーネスを出して履いている彼らに、おはようございますと声をかけてから休憩を取らずに北尾根に取り掛かる。こちらはそもそもハーネスを持ってきていないから、その準備に時間を取られることもない。

ちなみに、今回の登山で履いている靴は、ファイブテンのイグザムガイドというアプローチシューズ。ステルスソールだから岩場でのフリクションは抜群だ。

さて、まずは5峰。これは易しい。明瞭な道を辿って登っていく。振り向くと3人組はまだコルにいる。

Imgp5850

つぎに4峰。涸沢側にある踏み跡をたどっていく。5峰よりは難しい感じ。Imgp5853

ルートの参考にしたのは「チャレンジ!アルパインクライミング北アルプス編」(廣川健太郎著/東京新聞出版局)。これに書いてあるとおり、3つほどの大岩が左上に迫って来る。

Imgp5855

残置スリングがかかっているのが見える。この大岩を登ることもできるそうだが、ロープで確保していない私は絶対に墜ちられないので、そのまま右から巻き気味に行った。そうすると3峰が正面に迫って来る。Imgp5857

平坦な三・四のコルに着いたのは、6:15頃。ここでクライミングシューズに履き替える。ここで履かなかったら、このシューズはずっとお荷物だったことになる。履かねば。後続の3人組も登ってきているようだ。Imgp5860

前述のガイドブックにあるルート図を見ながら登り出す。少し上がったところから左寄りのところを登って行くと、大きなチムニーの上に大きなチョックストーンが挟まっているように見える。このチムニーの中に入って行くと、屋根のように乗っかっているチョックストーンの下に来る。左下の斜面には踏み跡らしきものも見えるがそちらには行かず、右上のチョックストーンをくぐって抜ける。

Imgp5861 Imgp5862

さらに進むと、先ほどよりはずっと小ぶりのチョックストーンがやはりチムニーの上に挟まっている。このチムニーではなく、その左側の凹角を登る。

Imgp5867

そしてなるべく易しそうなラインを探してガタガタとしたところを登って行くと、いつのまにか3峰を越え、2峰のピークに出る。ガイドブックに2峰から懸垂下降するとあるので、それと分かったが、実際は懸垂下降するほどではなく、普通にクライムダウンできた。仮に懸垂下降する場合でも、持参した補助ロープの長さで足りそうだ。とにかく短くて易しい。

Imgp5868

再びガタガタしたところを登っていく、景色が開けてきてその先に人がいる。前穂の山頂だ。7時過ぎ。五・六のコルから2時間だ。

【岳沢】

 前穂山頂で再びアプローチシューズに履き替え、やはりヘルメットもハットに替える。まずは紀美子平に向かって下りていく。登山者がたくさんいる。岳沢をどんどんと下っていき、8:50頃に岳沢小屋に到着。小屋の屋根の上では、干していた布団をスタッフが小屋の中に取り込んでいる最中だった。明日から天気が崩れてきそうだと話している学生グループもいる。

Imgp5876

 岳沢小屋から再び下っていく。道がだんだんと緩やかになってくる。登山者の中には外国人もいる。途中、風穴というのが道端にあり、顔を近づけると、穴の中から涼しい風が吹き出しているのが分かる。Imgp5877

 木道も現れてきて、上高地が近づいているのが分かる。やがて、平坦な道に出たかと思うと、登山者の格好ではない観光客が散策している遊歩道に出た。少し歩くとそこは河童橋。10:15頃。4日間の山行予定を、3日間で、それも午前中に終えることができた。振り返って下りてきた岳沢を見ると上部は曇っていて見えなくなっている。

Imgp5879 Imgp5880

【上高地】

観光客でごったかえしている河童橋のたもとで、まずはプロテインを飲む。携帯電話の電源を入れ、所属山岳会の下山担当者に電話する。担当者のTさんは、一日早い私の下山連絡に、前穂をやめたのだと思ったので、きちんと北鎌尾根も前穂北尾根も登ってきたことを告げた。

縦走をしていた以前は、数日かけて歩いてきて上高地に下りてくると、下界に帰ってきたという感じがして、その雰囲気を味わうために山行の終点を上高地にすることが多かった。今回、ひさしぶりに上高地を訪れたが、こうも観光客で混雑している上高地にはあまり長居したい気分ではなかった。小梨平のほうはもう少し静かなのかもしれないけれど、雨が降りそうな予報なので、余った一日をキャンプして過ごすことはせず、すぐに帰ることにした。

バスターミナルに行き、11:30発の乗車券を買う。その間、お土産を買ったりジュースを飲んだりして過ごす。

【帰途へ】

新島々駅までバスに乗っている時間は思っていたより長かった。新島々駅から松本電鉄で松本駅へ。お腹が空いていたので、駅前のお店で肉うどんを食べる。けっこううまい。

 14:08発の大糸線・信濃大町駅行きに乗る。一時間ほど経ったか、三日ぶりに信濃大町駅に帰着。タクシー会社の駐車場に停めておいたエクストレイルにザックを積み込み、帰途につく。

急いで帰る必要もないこともないので、した道をずっと走っていき、ようやく碓氷軽井沢ICで上信越道に乗る。3日間お風呂に入っていないので、途中、日帰り温泉施設にでも寄りたかったのだが、入りそびれてしまった。途中、けっこう大雨に遭ったりする。渋滞しているところはなかったけれど、さすがに疲れてきたし、ここ数日の未明の起床のせいか、関越道に入ってから眠くなってきた。高坂SAに寄ったところで、車中泊することにした。21時頃。

12日の5時頃に起き出して、再び運転し帰宅。ああ、疲れた。荷物をひろげ、洗濯をしてシャワーを浴びる。

北アルプスから帰ったこの日は、このまま家で休んでいたわけではない。所属山岳会のN野さんが、行くはずだった剱岳を取り止めたらしいとのメールがあったので、ではジムに行こうと誘ったので、昼から入間のベースキャンプへ。

両足は筋肉痛だし当然疲れているので、散々だったのは予想どおりだけれど、ジムのことは別途、日記に書く。

【おわりに】

 こうして、北アルプス縦走を無事完遂することができた。もっぱらクライミングばかりで山を歩いていない割には、北鎌尾根も前穂北尾根も一人で登ることができて、やり遂げた感がある。背負って長く歩けないと、アプローチの長い岩場に行くのに苦労するから、こういう体力もつけないといけないなあ。

 さて、北アルプスの余韻にいつまでも浸っていられない。つぎの山行の準備をしないと。

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