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北ア 白馬岳主稜

2014.05.03(土)~04(日)
 ゴールデンウィークの後半、北アルプスは白馬岳主稜を登ってきた。
初日は天気が崩れてきた中でⅢ峰付近で幕営し、翌日に快晴のもと山頂に抜け、大雪渓から下山した。
 トレースがずっとついていて、山頂直下でもロープを出すことなく、快適に登ることができた。
 同行者は、今年何度かクラックに一緒に行った北アの某山小屋で働くY和さん。

 金曜日夜、登山装備を積み込んだ車でY和さん家まで迎えに行き、中央道経由で白馬岳の登山口猿倉を目指す。高速道路はGW後半を迎え車が多い。Y和さんと運転を交替しながら、長野道の安曇野IC(旧豊科C)で降りて、日付を回った土曜日未明の1時過ぎに猿倉の駐車場に到着。100台くらい停められそうな駐車場に数十台の車が停まっていてテントも張ってある。我々もテントを張り、軽くビールを飲んでから2時頃に就寝。

■5/3(土)
 テントの外が騒がしくなってきて6時前に起き出す。駐車場の中にテントを張っているから、後からやってくる車のことを考えるとずっと張っているのもマズい。
 ヤマテンの天気予報では、この日は昼ごろから風が強まり、雨雪に見舞われるらしい。雨は止んでも午後から翌朝まで強風が続く見込みらしい。しかし、明日は回復するとのことだった。
 そこで、初日は主稜を登れるところまで登ることにした。インターネットの記録を見ると、Ⅲ峰付近にテントを張れるらしいことから、そこまで行くのが今日の目標だ。そこでテント泊して、天気が回復した明日朝に頂上に抜けるという算段だ。
 そのため、テントや寝袋などの宿泊装備、一晩分の共同食や炊事道具を用意。登攀具は、ピッケルにアイゼン、ハーネス、ヘルメット、確保器・カラビナ・スリング適宜、バイルも。

 雪山に入るので、お互いビーコンを装着して送受信のチェックを行う。大雪渓では雪崩の事故が多く発生しているし。6時50分頃に駐車場を発つ。猿倉荘の前を通り過ぎ、雪に埋まった林道を歩いていく。1時間以上歩いただろうか、大雪渓の入口が見えてきた。右手に見えるのが目指す白馬岳主稜だ。大雪渓の上を歩いている多くの登山者の姿が見え、主稜に取り付いているパーティーもいくつか見える。人気ルートだからやはり人が多い。
 小休憩してから我々も主稜に取り付く。尾根のほぼ末端から取り付いているらしいパーティーもいたけれど、我々は少し上の側面の傾斜の緩そうな雪面を選んで取り付く。というか、先行Pのトレースがあるのでそれを辿るだけだ。中には、もっと上の急な斜面に取り付いて岩場で行き詰まって降りてくる人もいた。

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(↑猿倉荘)
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(↑白馬岳主稜へ)
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(↑尾根に取付く)
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 まずはⅧ峰を目指して、何百メートルかの長い登りが続く。今のところまだまだ天気は良い。他のパーティーと前後しながら雪の斜面を登っていく。天気の良い中、ひさしぶりにこうして雪山を歩くのは気持ちいい。途中、ブッシュが現れているところを通過して、なおも雪面を登っていく。暑いくらいなのでジャケットは着ない。雪は日差しを受けてグサグサに柔らかくなっている。
 やがてピークっぽいところに至る。この辺がⅧ峰だろうか。少し行くと、下りてくる2人組と会った。聞くと、この先に露岩があり、そこを登れそうもないので引き返してきたのだと言う。登っていくと、彼らが言っていたらしき露岩があった。数メートルほどの岩場だ。グレードにしたらⅢ級もないようなところだ。それでも脆そうな石を手で叩いて確かめながら各自登った。今回、Y和さんに終始先頭を歩いてもらったが、この何でもない岩場だけは、いちおうクライミングしている私が先に登った。ロープは出さず。

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(↑露岩を登るY和さん。写真横向き)

 雪稜上をずっと歩いていく。山の上のほうは雲に隠れている。風も強くなり寒くなってきたのでジャケットを着込む。稜線上はナイフリッジというほど両側が切り立っている感じではないが、ばっちり付いているトレースを忠実にたどって行く。ピークらしきものをいくつも越えていったが、どれが何峰なのかはよく分らない。
 それまで快適に歩いていたのだが、標高2,000mを超えたくらいからだろうか、少しずつ息が上がってきて歩くペースが落ちてきた。大した標高ではないのだが、空気が薄くなってきて身体が重くなってきたらしい。昔は北アルプスなど3,000m級の縦走をしていたけれど、そんなところに滅多に行かなくなった今、これくらいの標高で息が上がってしまうのが情けない。数日前に早月尾根から剱岳を登ってきたばかりのY和さんは高所順応がばっちりできていると言って、変わらないペースで登っていく。
 辺りはすっかり雲の中に入ってしまった。ポツポツと雨か霙が降り出してきた。途中、休憩しているパーティーがいて、どうやらこの辺りでテントを張るようだ。

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(↑写真横向き)
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(↑ガスってきた)
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 先を歩くY和さんと距離が開いてきた。やがて傾斜が緩んだところに至るとテントが張ってあった。先行Pのテントらしい。男性3人のようだ。その隣りではY和さんがすでにテントを張る場所の整地のためスコップで雪を掘っている。13時くらいだったろうか。雨交じりの風の中、風を少しでもよけるために下に下に雪を掘っていく。1mくらい掘り下げたところでテントを張り、スノーバーなどでテントの綱を張る。

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(↑テント場の雪を掘る)

 テントの中に入ると風が避けられ、まずはホッとする。14時頃。装備を解いて、まずはお湯を沸かす。濡れた服から蒸気があがる。雪を入れた土嚢袋から雪をすくって鍋の中に入れ水を作る。雨に降られたのは短い時間で、再び山頂方面も見えるようになったけれど風は強い。暗くなるまで時間がある。しばらくお茶を飲んだりお菓子を食べたりしながら過ごし、夕方が近づいてきてからお酒を飲み始める。Y和さんが用意してくれた夕食を食べる。
寝不足と疲労から19時頃には寝袋に包まる。今使っているものよりは薄い古い冬用寝袋だったけれど、ガタガタ震えるような寒さではなかったのは良かった。夜中、風は強かったのでテント生地が頭に当たって鬱陶しかったけれど。
 深夜1時頃にトイレのためテントの外に出たときは、空は晴れ渡り星空が広がっていた。これは明日の登山が楽しみだ。

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(↑夕方の山頂方面)
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(↑杓子岳)

■5/4(日)
 3時20分にアラームが鳴って起床。お湯を沸かして朝食を済ます。外が明るくなってくる。快晴だ。起床から2時間ほどで出発。ここにテントを張った2パーティーはまだ出発準備中だ。Y和さんを先頭に稜線を歩いていく。前日はグサグサだった雪は凍って固くなっており、アイゼン、ピッケルがしっかり刺さり歩きやすいことこの上ない。

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(↑朝日。テントは別パーティーのもの)
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 1時間ほど歩いたⅡ峰付近にテントが1張りあり、出発の準備をしているところだった。彼らを追い越したことで、この日この先頂上までは誰もいなさそうで、我々が先頭になった。あまりにも快適で歩きやすいので緊張感がない。1晩泊まって、私もこの高度に身体が慣れたようで、おしゃべりしながら登っていく。

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(↑Ⅱ峰付近のテントを見下ろす)

 頂上直下の雪面がいよいよ近づいてきた。支点の取れる露岩から55~60mで山頂に抜けられるとネットの記録にはよく書いてある。ここでロープを出すことが多いようだが、私もY和さんも見上げたトレースの斜度の緩さを見て、ロープを出す必要はないね、ということになった。トレースは山頂直下の雪庇の右側に付けられていた。露岩にはハーケンが打たれていて、ロープを出す場合はここでビレイできるようになっていた。

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(↑山頂直下のビレイ支点のある露岩)
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(↑ハーケンが打ってある)

 ロープは出さないけれど、ここでバイルを出してダブルアックスでザクザクと登っていく。雪庇の切れ目からあっさり山頂に抜ける。ロープもスノーバーも全く使わなかった。

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(↑撮影のためバイルを大げさに振り上げてもらった)
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(↑雪庇の抜け口から主稜を見下ろす)

 抜けたところから標識の立つ山頂まで50mほど歩く。山頂に出た途端、強い風が吹いていて寒い。それまでが無風みたいなものだったので余計寒く感じる。山頂には登山者が何人もいた。見渡すパノラマは素晴らしく、特に剱岳がカッコいい。記念写真を撮る。

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(↑剱岳)
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(↑山頂にて私)

 強風で寒いので早々に下山を開始。少し降りると白馬山荘があったので、アイゼンを外して中に入る。中に入る際に、前日主稜を登ったという男性が話しかけてきた。天気の悪い中山頂に抜けたそうだ。そういう意味では、天気の良い時を選んで行動し、悪い時はテントの中にいた我々の判断は正解だ。長めの良い中、歩きたいからね。
 山荘の中では山スキーヤーの人達が出発の準備をしていた。ビールが売っていたので完登祝いに飲むことにした。ヱビスビール500ml缶800円を二人で分ける。美味しい。時刻は朝の7時半。朝っぱらからビールを飲むなんていつ以来だろう。

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(↑白馬山荘)

 30分ほど休んでから下山開始。途中、村営頂上宿舎というもう一つの山小屋はまだ閉まっていた。ここから大雪渓へと下っていく。降りるにつれて気温が上がっていくのか、暑くなって途中でジャケットを脱ぐ。

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(↑大雪渓を降り始める)

 大雪渓を降り始めてまだ10分くらいだった辺りだろうか、雪面に広く血の跡が広がっている。何か事故があったようだ。そういえば、今朝主稜を登っているとヘリコプターが頻繁に飛んでいるのが見えた。私はGWだから登山客の様子を撮っているのではと言ったが、北アの山小屋で働くY和さんはその様子に何かあったのではと言っていたのだが、そのとおりだったようだ。
 近くにピッケルが一つ落ちていて、拾い上げるとピッケルにも血痕があった。どうしたものか迷ったけれど、このままここに置いていくのもマズいので、下まで持って行くことにして私のザックに留める。猿倉荘で預ければ良いだろう。少し下ると再び雪面に血痕があり、辺りに菓子パンがいくつか落ちていた。やはりただ事ではないようだ。これらのパンはY和さんが持ってくれた。

 どんどん大雪渓を下っていくと、下から登ってくる人たちとすれ違う。その多くが板を持っている。スキーヤーかスノーボーダーがほとんどだ。そのとき、誰かが「落石~!」と叫ぶ。左後方を振り返ると、後方の岩場の斜面から落ちたらしい岩が音もなく雪面を転がり落ちてくる。大きさはデイパックくらいだったろうか、途中で止まった。大雪渓では大岩が直撃する死亡事故も発生しているが、雪の上を転がり落ちてくる岩は音もしないので気づきにくいだろう。特に下に向かって歩いていたら、後ろから落ちてくる岩にまったく気づかないかもしれない。

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(↑大雪渓を登っていくスノーボーダーたち)
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(↑白馬岳と飛行機)
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 はるか下方に白馬尻が見えてきた辺りで休憩を取る。ほかにも登山中のスキーヤーらがたくさんいる。その中に、Y和さんが以前所属していた山岳会の人達もいた。白馬尻の辺りまで降りてくると昨日登った主稜を登っている人たちが米粒のように眺められた。林道のトレースをずっと歩いていき、10時半頃に猿倉の駐車場に帰着した。

 拾ったピッケルを預けるため猿倉荘に赴くと、建物の前のテーブルに男の人達がいた。遭対協の人達らしく、登山届の受け付けなどをしているようだ。彼らにピッケルを預けると、遭難事故があったと教えてくれた。2人パーティーのうち一人が亡くなったという。このあとネットのニュースを見て事故の概要を知ったけれど、その亡くなった人がピッケルの持ち主がだったようだ。合掌。

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(↑帰り道、カタクリがたくさん咲いていた)
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(↑この花の名前はなんだろう)

 車で大町方面に車を走らせる。湯~ぷる木崎湖という温泉施設で登山の疲れを癒す。北大町駅近くにある鹿肉料理のお店は満席で食べられなかったので、大町駅まで移動して昭和軒というお店でソースかつ丼を食べた。ツーリングマップルに載っているお店だからか、ライダーの客が多かった。注文してから料理が出てくるまでえらく長く待たされたけれど、満腹になった。

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(↑昭和軒。写真横向き)
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(↑ソースかつ丼。写真横向き)

 さて、GW後半4日間のうち、2日間をこうして白馬岳主稜で遊んだ。残りの2日間は別のところで遊ぶのだが、雪山でひと仕事終えた我々は乾いた岩場でクライミングすることにしている。安曇野ICから小淵沢ICまで高速に乗り、小淵沢ICすぐそばにあるスーパーで買い出しをしてから今夜の寝床となる道の駅南きよさとへ。ここに泊まるということは、翌日行く岩場はだいたい想像がつくだろう。道の駅ではたくさんの鯉のぼりが空を泳いでいた。

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(↑道の駅南きよさと)

 駐車場の隅にテントを張って、お酒を飲んでいるとすっかり夜になった。メールで連絡があったHUさんが車でやって来た。HUさん曰く、明日は午後から天気が崩れる予報だから、雨に比較的強い湯川に行ってクラックしようかという話しになった。HUさんはしばらくいたあと、別のところに泊まっているはずの所属山岳会の人達に顔を出すべく再び車で出ていった。疲労でとろとろと眠いので寝ることにした。
 翌5日の早朝、メールチェックすると昨夜会ったHUさんからのメールが届いていた。急用のため東京に帰るとのこと。ということで、湯川行きは白紙にして、改めてこの5日の行動をY和さんと相談する。つづく

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